16-5「神社」

 

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地名国名[039]
16、カム・ヤシロ〈5/5〉

◇「神社

 始めは小さな祠〔ホコラ〕でした。自然界の強い力を司るモノ(山神、海神など)を祀っていたのでしょう。その後、人も祀るようになっていく。

集落の人口が増え、財力や技術力を持つ様になると、小さな祠(木箱に簡単な屋根を付けたもの)が建物(高床式)に変わってゆく。呼び名もキツ・キラトノ(ホツ・クラトノ=ホコラ)からアツ・キラツノになり、音転してヤツ・シロトノとなる。この音に社殿〔ヤシロトノ〕の字を充てた。

更に神の字が頭に置かれ「神・社殿」、ここから神社という呼称が生まれた。この「神」の字に付いては二つの事が考えられます。

  1. カツキと呼ばれるモノを表しており「カツキのヤシロトノ」(神・ツ・社殿)が元の意味。
    カツキとは、自然界を司るモノ、先祖(また始祖)、カツキと呼ばれる人(武官・文官・神官)などが挙げられる。とりわけ武人は社会的に評価が高かったようで、りっぱな建物で盛大に祀ることが多い。
  2. 褒称や敬称の接頭語としてのカツ。
    神・倭〔カム・ヤマト〕、鴨・武角身〔カモ・タケツノミ〕、鹿ツ・葦津姫〔カツ・アシツヒメ〕などの、カム、カモ、カツ、と同じ類いである。よって「カム・ヤシロトノ」(神・社殿)と呼ぶのが本来の音。ここで使う「神」はカムの音に充てた仮名字であり、字義は考慮しなくてよい。

 

*例えば、この世に人間がたった一人だと、名前は要らない。二人(或いは三人)以上になる事で呼び分けが必要になり、固別の名が付けられる。

仏教が入って来たことに依り、土着の崇めものにも名が必要となり、神道という呼称が作られ、さらに仏〔ホトケ〕の存在に対して神が据えられる。その頃から神〔カミ〕の字の扱い方が大きく変わってきた。

それまでは、単にカツキ(他に優越するモノ)全般を表わす普通文字だったのが、超越するモノ、絶対的存在、といった扱いになってゆく。

よって、現代の神の字に対する感覚を、そのまま上代の神の字に当て嵌めてはいけない。

 


◇「神社の役割

 平地利用の優先順位は、荒れた土地でない限り、まず稲田の耕地が第一位です。水田は水を張らなくてはならないので、平らな土地が必要でした。

ただし、王の住居と墓は水田よりも優先されます。特に巨大墳墓(前方後円墳)の多くは水を湛えた濠に囲まれており、これもまた平地でなくてはならなかったのです。

では、王族以外の者の墓はどうだったか。高官の墓は石室を持つものであっても、山の中など自然の地形を利用して作られた。そして、一般の臣の者は個別の墳墓ではなく、祀る為の施設が建てられ合祀されたと思われます。

奈良の春日大社や京都の下鴨神社をはじめ、武官(タケツミ・イカヅチ)を祀る所が多くあります。神社の多くは、臣の者(ツキツキ)を祀る施設であり、とりわけ武人を対象とした慰霊祠だったのでしょう。

 

▽ちなみに。
 神宮とは、大王や領主の旧住居や別荘を社に改修した大ツ御・神〔アキツミ・カツキ〕ツ宮=神宮であり、成り立ちに於いて一般の神社と分けて考える必要がありそうす。神社と神宮は施設の格の問題ではなく、そもそも違うモノです。

 神社:カム・ヤシロトノ(殿)
 神宮:アキツミ カツキのヤ(大御 

特に最近できた神宮(橿原神宮平安神宮明治神宮など)は宗教施設とも言い難い。とても立派な記念館、もしくは神社風モニュメント、と分類されるべきものです。

神社と神宮の違いについては、様々な媒体(書籍やSNSなど)で解説されているのを見ます。一つの解釈として尊重はします。