「数のこと」五と十

【ツツ考】[025]___
「五」「十」

◇「数の組合わせ」五組。
 [小:大]       (原音)
  一:二  ヒィ:フゥ(キツ:カツ)
  三:六  ミィ:ムィ(キィ:クィ)
  四:八  ヨォ:ヤァ(オツ:アツ)
  五:十  イツ:トヲ(キツ.ツツキ:キツ.ツツキ.ケル)
〈端数〉
  七:九  ナナ:ココ (ナナ・ツミ:クク・ツキ)

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◇「」と「10」の音
これらを表す音の作られ方は「ツツ」が基本にあります。ツツとは連続や移動を表わす意を持つ語です。

この音「ツツ」に頭辞や尾辞が付き、また転音してイツツ(五)、トヲ(十)、という言葉になって使われます。

五:キツ・ツツキ→イツ・ツツキ→イツツ。
十:キツ・ツツキ・ケリ→ツツ→トヲ。
※ケルやケリは完了を表す語。

元は少々長めの語なので、音を簡略化した上で、且つ明確に分けるため、五は「イツ」といい、十は「ツツ」(また、トフォ、トヲ)といった音に移っていきます。


*「〔イツ〕
指を順次移っていくのをキツ・ツツキ(移動)といいますが、ここでのキツは指の意でしょう。
※「ユビ」という音は、キツ→イブ→イウ ビ(ユビ)と転じた言葉です。指宿はイブスキと読み、古い発音が今も残っています。棒状のモノは概して「キ」の音で表します。

①イツ・ツツキは、イ・タタリ→イタリ、また、イツツリ→イタレリ、という語になる。イタリ(至)とは終着ではないが、一つの到着点を意味する語です。

②イツ・ツツキが略されて「イツツ」(ただ、イ・ツツなのか、イツ・ツなのか、これに付いては悩ましい所)、また「イツ」という音になる。片手の指の数が5本であるところから、イツツの音は数の五を表わす言葉としても使われる様になる。

 

*「〔ツツ〕
 イツ・ツツキ(指の移り)のままだと五と同じになるが、両手に及んで完了した場合、後ろに「ケリ」(またケル、ヘリ、セリなど)の音を付け、イ・ツツキ・ケリという語になる。ただし、イツツ(五)との混同を避けるため、頭のイを省きツツキ・ケリとします。

① ツツキ・ケリは、ツツキがツキと短縮し、ツキ・ケリ(尽きる)になる。また、ツキ・ケル→ツイヘルやツイヱル(終ゑる)の音で、終了、最後、結末、などを意味する言葉になります。
 ※ツツキ(移動)にケリを着ける、という事ですかね。

 ツツキ・ケリ →ツキ・ケリ →ツイヱリ
        (尽きけり) (終へり)

よって、尽〔ツキ〕と終〔ツイ〕は同根の語と言えます。

 

② 終了などの意味とは別に、両手の指の数から十を表わす語にもなり、これを表す音として、日常的には後ろの音を省略した「ツツ」のみで長らく使われていたようです。その後、音便でトォが多く使われるようになっていきます。

 

◇「至れり尽くせり
イツツキは途中の到着点をいい、ツツキ・ケリは終着点を表わす言葉です。

 イツツキがイタタリ(至)→イタレリ、
 ツツキ・ケリがツキ・ケリ(尽)→ツキセリ、

と発音されて「イタレリ・ツキセリ(至れり尽くせり)」という言い方が生まれる。始まって、途中経過から最後まで完全な状態が続く様子を表わす。(ツセリを今はツセリと発音します)

一般的には「配慮が隅々まで行き渡ること」といった意味で使われますが、意図するところは間違っていないとはいえ、これが本来の意味かというと少し違う。

イツツキ・ツツキケルとは、例えば「乗り換え駅に至り、終点駅に着き(尽き)ける。」という使い方でしょうか。指を順番に移ってゆく動作で言えば「片手(五)に至り、両手(十)で尽きける(終わる)」ということになります。

 

▽ちなみに
十進法は人間の指が10本であるところから作られたものでしょうね。しかし、これが宇宙の真理かと言えば疑問です。

他の惑星に住む生命体が十進数を使っているとは限りません。仮に彼らの片手の指の数が7本なら、14で桁上がり、という形になっているでしょう。

人類には、他に「四分の一」という発想もあり、時を測る場合、12や60といった記数法を用います。また、コンピューターは二進法で作られています。

私たちは、たまたま十進法をメインに使っているに過ぎません。とはいえ二気五行の様に、5という素数に裏表〔ウラ・オモテ〕がある、という発想は少々魅力的ではあります。

 

*十という数の外にも、我々の文化を見る時、皆が大好き「八」という数に付いても考える必要があるでしょう。