1-2「平面」

地名国名[002]
1、カツカ〈2/4〉

◇「耕地:ハタケ」
 畑や畠の語音のハタは、カツカがハツタと音転したのちツが落ち、ハツタ→ハタとなった。ハタケは、カツカ・キ(ハツタ・キ)が、→ハタ・ケ(平坦・地)と転じてできた語である。

ここでのカツカ(ハタ)は「平らな面」、キは「地」です。よって、この言葉の意味は、自然にできた「平らな土地」をいいました。

いつしか作物を育てるため人為的に平らにした地をハタケ、またハタと呼ぶようになります。

 

◇「カツカ・のチ」
 桂川(京都)の下流域の西側に羽束師〔ハズカシ〕という地名があります。この名は、恐らくカツカ・キ→ハヅカ・シ、と移ったものではないかと考えます。

巨椋池があった頃、この西岸辺りには堆積土によってできた雑草が生茂る土地が有ったのでしょう。上代の或る時、この土地を農地にすべく、稲作の先進地播磨国の速待という人に、三年の税免除を与えて新田開発を任せた。

ところが、砂混じりの痩せた土地は田にするには時期尚早だったようで、三年を経ても上手くいかず結局撤退を余儀無くされた。

そんな出来事があって、これを “全く打ち解けてくれない比賣” になぞらえて作られたのが、《仁徳紀》にある桑田の玖賀媛の話ではないだろうか。羽束師の北隣に久我という地名がある。

「恥かしい」という言葉と「羽束師」との関連は定かではないので何とも言えないが、或いは繋がっているかもしれない。

▽ちなみに。土地を女性に例える話はしばしば見掛けるが、共に“命を産むもの”という事以外に、シマという語の元の音がツマだった事と無関係では無いように思われる。

 

◇「小さいカツカ」
 カツカの音は「少量」の意で使うことがある。微か(クァ・スカ)、僅か(ウァ・ヅカ)、半端(ハンパ)などの音はカツカから転じたものでしょう。

また、ハツカ鼠、ハツカ大根、などのハツカは「小さい」を意味する語です。「小わっぱ」という語は小者の意がありますが、カツカの先のカが拗音でクァ、後ろのカが、→クァ→ファ→プァ(パ)と転じて、カツカ→クァッパ→コワッパになった音でしょう。

沖縄言葉で、グァは小さいもの、ファは子供を表わす語として使われます。これらは拗音・クァから転じた音と思われますが、拗音がそのまま残っている言葉です。

先に紹介したハヅカシという地名も、小さな土地という意が含まれているのかも知れません。

 

通番[003]へ続く。