1-1「カツカ」

地名国名[001]
1、カツカ〈1/4〉

◇ 「アカ」
 記紀によると「この世の始まり(原形)は、一切のモノが乱雑に混ざった渾沌とした空間だった」としています。もちろん、誰も見た者はいないので、実際のところ詳しくは分かりません。あくまで先人の想像説です。

ある時、この渾沌空間の一部で分離現象が起こります。初めは微細なものでしたが、次第に全体に広がっていきました。

どれくらいの時間が過ぎたでしょうか。いつしか、上空には何も無い澄み切った空間が広がっていました。この空間を「キ」といいます。とても広かったので広大を意味するアの音が頭に乗って、アキと呼ばれます。

一方、分離によって沈んでいった物質は下に溜まっていきました。この物質を「カ」といいます。何処までも続いているので、こちらもアが付き、アカと言いました。

ここでいう物質とは水(海)のことです。土(陸)は未だ存在していません。そこでアカという語は、物質、海、水、また液体全般、などの意で使われます。


*「水」(液体)
 太古の日本語には液体を表わす言葉としてキとアカの二種類が有りました。海の呼び名であるウミはンキから、ワタはアカから、それぞれ移った音です。川の名にあるキツ川やアカ川は、その地域の人達たちが水をどちらの音で呼んでいたかによるもの。

ミズ(水)、ミツ(蜜)、シル(汁)といった語はキツのキがミやシの音に転じたものです。ツは、ツ→ヅ→ヌ→ル、と転じます。

アカはアが膨張してアッ(促音)になり、アッカとも発音し、これに予唸音・ウが付いて、ゥアッカ→ワッカ(水/アイヌ語)という語にもなります。

アクア(Aqua)はラテン語で水を意味しますが、この音はアカのカが拗音でクァと発音されたものでしょう。


*「酒」
 アカは当初、海をいう語でしたが、海は水であり、水は液体なので、飲み物を表わす言葉でも使われます。

海外の言葉で、ウォッカ(酒/ロリア語)、バッカス(酒の神/ギリシャ語)など、酒を表す語があります。ウォッカは、アッカに予唸音・ウが付いて、ゥアッカがウオッカに転じたものでしょう。

ローマ神話バッカス(Bacchus)は、ゥアッカ・ツキ(酒・司る神)→ヴァッカ・シ→バッカ・ス、と移った語と考えられます。予唸音・ウが濁音のヴになり、後ろにモノを表わすキが付いて、これがキ→シ→スと移った音。

 

*「新鮮」
採れたて、出来立て、というのは多くの場合、水分量が多く含まれます。生まれて間なしの児「赤子」は、アカ・ツキがアカ・ツコ→アカゴ(乳児)となった音に充てた字ですが、ここでのアカは「瑞々しい」の意であって赤い子では有りません。

アカの頭に予唸音ウが付いた音、ゥアカ(ワカ)は「若い」の意で使われます。つまり、ミズミスシイのミズと、ワカワカシイのワカは、キツとアカの違いによるものであり、その語が持つ意味(水分量の多いモノ、また新鮮なモノ)は同じということです。

▽ちなみに。アシカビヒコヂという神は最初の音をアツカツキというが、切る場所が難しい。アツ・カツキ(とても・偉大)とするのが自然だが、或いはアッカ・ツキ(液体・のモノ、また海・のモノ)の意が先にあったのかも知れない。


◇「カツカ」
 カ(物質)で出来たカ(処)を、カツカと云います。水は常に表面が平らですよね。また高さも同じです。「水平」という言葉が水に平と書くのは、全く納得するものです。

この事から、カツカは面を表す語になります。水面はもちろんのこと、地面、斜面、断面、表面など、あらゆる面を表わす総称として使われます。

時を経てカツカは、その対象となるモノによって、色々な音に変化して使われるので、一見無関係な語に思えるものでも、源音はカツカであるものが多くあります。人類が作った*基本四単語の一つであり、人間の生活に密着した言葉です。(※基本四単語=キツキ、キツカ、カツキ、カツカ)

通番[002]に、つづく。