18-7「ハナとサキ」「ミサキ」

地名国名[053]
18、カサキ〈7/7〉

○「ハナとサキ」
 迫り出した土地をハナ(鼻の字を充てる)と呼ぶ地域が現在でも西日本の各地にある。この音はカサキがハナサキと転じた後、略されて前の二音を使ったものでしょう。

或る地域はハナを残し、或る地域はサキを採った。例えば、ヘルメットを略してヘルという人、メットという人がいる如く、ハナサキにもハナ派とサキ派がいたと思われます。

時代が進むうちに、サキが世間標準になっていき、ハナは少数派となってしまった。また今、地名として鼻〔ハナ〕の使われ方を見ると「岬の先端」を意味する扱いになったようです。

▽ちなみに。顔の真ん中にある鼻も元の名は、突出したモノを意味するカツキだったのだろう。あとは崎〔カサキ〕と同じ転化を辿って、ハナという語になったと思われます。

 

○「ミサキ」という呼称
 崎は本来カサキであった。ところが今はミサキ(岬)と云う。カサキが何故ミサキと云うようになったのか。

「崎の頭に御の字を載せて御崎〔ミサキ〕でしょ。丁寧に表現しているのであって、取り立てて提起する程の事ではない」

こう説明すれば、当然の事、として何処からも異論は出ないだろう。ただ、一つの見方として次のような経緯〔イキサツ〕も考えられます。
キツ・カサキが一般的な呼称であった。少し転じてキノ・カサキ(城之・崎)やチノ・ガサキ(茅ヶ崎)などの形にもなる。

また、キツがミツに変わりミツ・カサキという音もよく使われ、このミツの音に三の字を充てて三ツ・崎とした。これがミ・サキと読まれるようになる。後に三の字を同音の御の字に変えて御崎の表記が作られた。(※ツの音は省き字、表記しない)
 キツ・カサキ
 ミツ・カサキ→三ツ・崎→ミサキ→御崎。

○「三島」「三国」
キツがミツになり三の字が充てられる例はよく目にする。キツ・カシマがミツ・カシマになり三ツ島〔ミツ・カシマ〕と表記されミシマになる。また三ツ国〔ミツ・カシマ〕と書いたのがミクニと読むようになる。

キツ・カツラがミツ・カムラになり三ツ村の字からミムラになる。キツ・カヤマがミツ・カヤマになり三ツ山や美ツ山と書きミヤマになる。

同様のルートで、ミツ・カサキが三ツ崎と表記され、ミサキの音になることも大いにある事だ。
この音に今は岬の字を充てる。