18-5「難波崎・2」

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地名国 名[051]____
18、カサキ〈5/7〉

「ナム・カサキ」其の2

 かつて上町台地の北端と、北摂地域(吹田、豊中、尼崎など)の間には海が広がっていた。

稲作が始まり長い年月を経る間には、相次ぐ新田の開発、人口増加による集落の拡張、大墳墓の造築など、色々な土木工事が広範囲に且つ頻繁に行われてきました。さらに、森林伐採に因る禿山化も起こります。

掘り返されあとの土は、しっかり搗き固められたとしても、雨が降るとどうなるか。近くを流れる小川の水は、少しの間とはいえ土色に濁るでしょう。

“地域の発展”は土砂の量を、自然流出の何倍もの速度で増大させる事になります。

南の川(大和川)は、難波津の入江に扇状地を作り成長させてゆく。本より水深の浅い入江だったことから、入江南部の陸地化は加速度的に進んだ。

北は巨椋池の出口から流れ出る水が土砂を運び、三島と枚方の岸辺を埋めてゆく。両地域の海岸線は徐々に先へ拡がり、海が狭〔せば〕まってゆく。上流は川の様相に成りつつあり、大川、鵜川、山代河などと呼ばれ始めました。

其処より下流域の入江には州が成長したような小さな島が幾つも出来てはいましたが、それでも此の辺りはまだ充分に海と呼べる環境ではありました。

そんな時代にあって、土地の人はこんな歌を作って遊んだ。

 迦牟之佐伎 南無波那乃佐伎 阿麻賀佐伎
 三津乃波那佐伎 見都波那乃佐伎

 神の崎 浪花の崎 海崎
 三津のハナ崎 目と鼻の先

 

▽ちなみに。三津については次の意が係っていると思われます。
⑴ 入江や湾をいうミツケ、三津浦。⑵ 崎の一般名詞であるキツ・カサキのキツがミツと発音される。⑶三ヶ所の崎の意。⑷見える(見つ)崎。

 

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「ナム」という音

 南無妙法蓮華経南無阿弥陀仏の南無〔ナム〕とは、梵語(namas)音訳で帰命と意訳する。

帰命とは、仏・菩薩・経文に帰依し絶対の信頼を寄せ、身命を信仰の対象になげ入れる、という意味を持つ語という。

偉大なもの、突出した存在、などの意を持つ褒称や讃美の接頭語であったのでしょう。ただ、それを何故「ナム」というのかの説明は見えない。

ナムの音の成り立ちは知らずとも、『どうやら高貴な音らしい』とは感じており、この語にそれらしい意味を付着させていった。それが先の説明になったと思われます。

 

阿弥陀仏とは、アキツ・カツキがアミダ・ フツト(仏)と転化した音でしょう。これに偉大さを強調する接頭語・アツを載せる。アツの音が大の意で用いられるのは洋の東西を問いません。

アツのツは、ツ→フ→ブ→ムと移りアムと成り、更にこれをより強める為、始発音・ヌが付きヌアム→ナムになる。この音に南無の字を充てる。

 

 

「ナンバは南無波」

 ナムバ(難波)のナムは、音として南無と同じ成り立ちを持つ。ナム・ハサキと呼ばれた崎は鋭く突き出た地形であると同時に、地理的にも地域の中心に位置しており、重要な役割を持つ場所であった。

「偉大な・カサキ」という語、アツ・カサキが転じて、ナム・バサキ、ナニ・ハサキ、の音になる。この音に「難・波崎」の文字を充てた。これが難波という名の真相です。