17-5「釜山」

地名国名[044]
17、「カヤマ」〈5/7〉

○「釜山」
 朝鮮半島の南端、玄界灘に面した地にプサンという町がある。この地名は町の北側にある釜山〔プサン〕という山の名からきている。

現地の郷土史家に、この山がなぜ釜山と呼ばれるのかを聞くと「山の形が釜〔カマ〕を伏せた様な格好をしているから」などの説明が返ってくる。

「知らない」と云ってるのに他ならない。

釜山という字面を見て誰しもが単純に思い付く鼻元思案でしかなく、この説を裏付ける薄い伝承根拠すら何もない。

この名はどう見ても、カヤマのカが膨らんで、カムヤマ→カマヤマとなった音に、釜山〔カマヤマ〕の字を充てたとするのが自然であり、それ以外の理由が見つからない。

これが間違っていなければ、この辺りの先住民は日本語を使っていた(少なくとも、日本語と同じ言語文化圏であった)ことを示すものである。

そしてまた、単に稜線がなだらかな山の名としてのカヤマではなく、誰かを埋葬した場所としての呼び名だったとすれば、重要人物の墓が有ったのかも知れない。

《神武記》に、五瀬命(神武の兄)を埋葬した場所を「陵卽在紀國之竈山也」と書いている。紀国の(何処かに有る)カマヤマだが、こちらは竈山の字を充てる。

ただ、この一文はどう読み下すのだろうか。二通りの解釈ができるが、はっきりしない。

  1. カマヤマと呼ばれる地形の所に葬った(陵は、紀国の竈山に在る)
  2. 葬った墓をカマヤマと呼んだ(陵は、紀国に在る竈山なり)

 

*「釜山」の謂れを知ろうとしても、字を音読みでプサンと発音している限り、釜の字義に執着している限り、その由来に行き着く時は永久にやって来ない。