17-3「大坂山」「男山」

地名国名[042]
17、カヤマ〈3/7〉

○「大坂山」
  キツ・カヤマ→ヲサ・カヤマ
          小   坂 山(大坂山)

 キツが、クィツ→クォツ→ウォス→ヲサ、と転じる事で、キツ・カヤマがヲサ・カヤマと発音され、この音に小坂山の字が充てられる。
後に小坂山の小の字が大に変わり大坂山になる。

大坂山は普通名詞のように使われ、この表字だけでその場所を特定するのは難しい。《履中記》にある「故、到幸大坂山口之時、遇一女人」や「率曾婆訶理、上幸於倭之時、到大坂山口」は、大和と河内を分ける山の何処かだろう事ぐらいは推測できる。

※この大坂山口は「大坂山ノ口」であって「大坂ノ山口」ではない。此の時代、大坂を地名として扱っていません。

 

上町台地(難波崎)の北端もキツカヤマであり、これがヲサカヤマと転じて小坂山や尾坂山といった表記が使われました。

ヲサカ・ヤマ(ウォサ・カヤマ)の音に小坂山、更に大坂山と表記が変わる事で、この漢字に即した音のオホサカヤマ(オーサカ山)で定着する。

時代が下ると共に、この辺りの人口が増えていきます。難波と呼ばれる地域全体の中で、北部にある大坂山とその周辺を大坂と呼ぶようになってきます。

恐らく、地名としての大坂は此の場所(現大阪城、界隈)の呼称が発祥でしょう。

 

上町台地の北は、上記とは別に石山とも呼ばれていたと思われますが、石山には二つの成り立ちが考えられる。

  1. キツ・カヤマのキツがイツ→イシと転じてイシ・カヤマになり石山と表記した。
  2. キツがイツ、カヤマがハヤマに移り、イツ・ハヤマ→イ・ハヤマとなった音に石山〔イハヤマ〕の字が充てられたが、後にこれをイシヤマと読むようになる。

どちらにしろ、此の地に建立された石山寺石山本願寺)の名は、ここから付けられたものと考えられます。

 

▽ちなみに。
「逢坂」は、アキツ・カ→アイサ・カ、の転音です。アイサ・カヤマ(逢坂山)やアイサ・カムラ(逢坂村)などの名がある。このアイサが音便でオウサになる。

「大坂」は、そのまま読めばオホサカです。しかし、始まりはキツ・カからヲサ・カに転じた音に充てた小坂の字です。

*逢坂と大坂は始めの音も転化後の発音も異なります。でも今は共にオーサカと発音する事で「元は同じ名であり表記が違うだけでしょ」という扱いになっているようです。

 

○「男山」
  キツ・カヤマ→ウォツ・コヤマ→ヲト・コヤマ
                  男  山

 キツ・カヤマのキツが、クォツ→ウォツ→ヲトに、カヤマがコヤマと移り、ヲト・コヤマの音となって、男山の字を充てる。

生駒連峰の北端(山並の終わる所)にあり、巨椋池の水の出口となる場所(一口=イモヤライ)に東から突き出た地で、頂に石清水八幡宮がある。

土佐日記の淀川上りの章に「東〔アチ〕の方〔カタ〕に横ほれるを見て、人に問へば八幡の宮といふ。これを聞きよろこびて、人々、をがみ(拝み)たてまつる。」とあるのは、この山の宮です。