地名国名[010]
3、キツ・カツマ〈3/5〉
○「出雲国」
キツ・カツマ→キヅ・カムシマ→イヅ・クモシマ
出 雲 国
キツがイヅに転じた音に出の字を充て、カツマのカが、→カン→カム→カモ→クモ、と膨張・転化してカツマがクモシマに変わり雲国の字を充てる。こうして、イヅ・クモシマ(出雲国)の音(表記)ができました。
カシマのカが膨らんでカモシマやカムシマの音になり、カモに鴨、カムに神、などの字を使うのは、どの地域でも見かけるし、自国を表わすのにも使う音です。ところがこれをクモと発音し、雲の字を充てると意味は少々違ってくる。
クモシマ(雲国)は他国に対してであって、特に敵対するクニには侮蔑的な意味も含めて使っていた。雲というのは日や月を隠すものであり、忌み嫌われる対象物なのです。
日はアキツキ=王、月はツキツキ=配下の者。雲はこれを妨害するものなので、邪魔者という事になりますね。
国の場合はカツマ→クモシマ。乱暴者はカツキ→クモスケ。未開人はケツキ→クモツチ、またツチクモとなります。
A国にとってB国が、B国にとってA国がクモシマであり、互いに相手をそう呼ぶのです。特定のクニの名ではなく、他所(よそ)のクニ、組せぬクニを意味します。
よって、上代(またそれ以前)の頃には、あちこちにイヅクモシマ(出雲国)があったと想像されます。
ここに示されている出雲国が山陰の出雲とは限らないし、また、これらが同一の地とも思えない。
時代が移り、大きな勢力を持ったクニの出現によって、諸々のクニは吸収されたり、同盟関係になったりして集約されたゆく。
そのうち、イヅクモという言葉も使われなくなって、全国から消えてゆく。唯一残ったのが、長く独立を保っていた山陰の宍道湖周辺を拠点とする一大勢力であった。
いつしか大和との対立も無くなるのだが、その頃にはイヅクモ(出雲)という呼び名(表記)もすっかり馴染んでしまっており、元の意味も忘れ去られ、呼び方もイヅ・クモシマでは無く、イズモのクニ、と変わって固有の地名となります。
◇「青雲」
伊波禮毘古(神武)が難波に入った時、「経浪速之渡而 泊青雲之白肩津」〈浪速の渡りを経て、青雲〔アオクモ〕の白肩の津に停泊する〉とあります。この青雲をセイウンなどと読んではいけない。
親交の無い大きな国をアオ・クモシマ(大国)と呼び、このアオクモに青雲の字を充てている。大と青は発音が類似していること、また白肩の白と並べるためなどで青の字を使っているのでしょう。
伊波禮毘古にとって、難波も大和も侵入を謀ろうとする地であり、この時点では青雲(敵対国)であった。
[011]へ、つづく。