地名国名[020]
6、カツ・カツマ〈1/2〉
◇「カツ・カツマ」
規模の大きい連合集落や、勢力をもった主幹国のカツマには、褒称の接頭語・カツを乗せカツ・カツマと呼ぶ形があります。
これに文字が充てられ、カツ・カシマ(鹿ツ・島、加ツ・賀島)、カツ・コシマ(鹿ツ・児島、加ツ・古島)などの名になって、今に残ります。島の字を使ってはいますが国を意味します。
その他、カツがカシになりカシ・コシマ(賢島)、カムになりカム・カシマ(神国)。ここから、日本は神国〔カミのクニ〕、という誤解が生まれます。
また《書紀》神代冒頭・一書曰⑵ にある葉木国はハツ・コシマ(葉ツ・木国)であろうと思われます。
ただ、記事では「葉木國、此云播舉矩爾」〈葉木国、此をハコクニと云う〉と、読みを注しています。八世紀頃には元の読み方が分からなくなっていたのでしょう。
○鹿島という地名は全国にありますが、読みはカシマまたはカジマです。しかし、この文字表示がはじめて為された時は、ちょっと違いました。大きな領地や勢力をもった鹿島の場合は、鹿ツ・島(カツ・カシマ)であり、カツの音に「鹿ツ」、カシマには島また国の字が充てられた。
ただし、水に囲まれた小さな島のカシマの音にも鹿島の字を使う事がありますが、その場合の鹿島はカシマです。
神島、上島、なども少々面倒な表記です。単にカシマのカが撥ねてカンシマ→カミシマと転じた音に充ててるだけで、カツ・カシマのカツがカミになり神や上の字を用いたのでは有りません。
これらを見極めるためには、其のカシマが志麻なのか志摩なのか、またその規模が大きいか、小さいかの違いで測るしかないでしょう。
○「妣国」
《神世記》須佐之男命、啼伊佐知伎の条。
「…須佐之男、答白、僕者 欲罷妣國根之堅洲國、故哭。」〈私は、妣國根、之堅洲國に罷〔マカリ〕たい。ゆえに哭く〉という一節がある。
ここでは「妣國」を「ハハのクニ」と読んでいます。確かに妣(亡き母)の字は、ハハまたカカで、國はクニだから問題は無いように見えます。
しかし、この妣國には、カツ・カシマとカツカ・シマの異なる二種類の成り立ちがあると考えられます。
⑴ カツ・カツマ→カ・カ シマ
妣 國
⑵ アカツカ・ツマ→カカ・シマ
妣 國
⑴ 勢力を持ったカツマは頭にカツの音が乗り、カツ・カシマになります。この音に対し、例えば「迦・加国」などと書かれ、この迦・加(カカ)に同音の「妣」の字を充てた。
⑵「妣國」は、須佐之男の生まれ故郷(母国)を言ってるのでしょう。では、須佐之男の「ふるさと」とは何処か。それはアカツカ(海)であり、この音・カツカからツが落ちてカカになる。
海には常に潮流がある。動く水はツツ・ヌ・キといい、これを司るのがツツノヲ(筒之男)、その親玉をスサノヲ(須佐之男)という。よって、須佐之男の生まれ故郷、妣國は「海」となる。
▽ちなみに。
海に関する語に、母港や母船など母を使った言葉があります。また、日本語で母をカカやハハと云うが、海外にあるママの音もカカから転じた音であろうと思われます。
これらを見ると、海も母もカカというのは、遠い昔の人類語ではなかったか、と思ってしまいます。