【ツツ考】[002]___
⒈ 時間
「ツツキ」
○「次(ツキ)」
時間の推移や経過などが順序立てて進行する、また物事〔ものごと〕が繰り返し継続されることをいいます。元の音はツツキであり、縮んでツキになる。後にキが濁音になった。
古事記に於ける「次」の字の扱いには大と小があり、大の「次」は棚字の位置に、小の「次」は平句の頭に置かれる。幾つかの例を挙げてみます。
○伊邪那岐の禊に因って神が成る一場面。各道具類は大の「次」、その内に成る神は小の「次」として扱います。
次 於投棄左御手之手纒 所成神
名 奧疎神
次 奧津那藝佐毘古神
次 於投棄左御手之手纒 所成神
名 奧疎神
次 奧津那藝佐毘古神
次 奧津甲斐辨羅神
次 於投棄右御手之手纒 所成神
名 邊疎神
次 邊津那藝佐毘古神
次 邊津甲斐辨羅神
次 奧津甲斐辨羅神
次 於投棄右御手之手纒 所成神
名 邊疎神
次 邊津那藝佐毘古神
次 邊津甲斐辨羅神
○大雀(仁徳)の子。皇子として記す時点では、小の「次」(平句の行頭)を使うが、大王として表す時には、大の「次」であり棚に置かれる。
石之日賣命大后
生御子 大江之伊邪本和氣命
次 墨江之中津王
次 蝮之水齒別命
次 男淺津間若子宿禰命
故 伊邪本和氣命者 治天下也 (履中)
次 蝮之水齒別命 亦治天下 (反正)
次 男淺津間若子宿禰命 亦治天下也(允恭)
◇太子を日嗣皇子(ヒツギのミコ)というが、ヒツギとはアキツキ(王)のツツギ(継承者)
アキ・ツツギ・ツキ→ヒ・ツツギ・ツキ(日ツ継ぎ・のコ)の音になったものである。
また、書紀に「吾子孫八十連属…」とあるヤソツヅキは自分の末裔・子々孫々(続く限り)を表す。
吾・子孫〈私の・末裔〉、八十・連属〈ヤソ(多く)・ツヅキ(続く)〉
(※ヤソは、アツ→ィアス→ヤソ、と転じた音に八十の字を充てる)
ここにツツキ(次)、ツツギ(継ぎ)、ツヅキ(続き)、という僅かな音違(おとたがえ)による使い分けがある。