20-1「アハキ」

地名国名[055]___ 

20、アハキ〈1/2〉
 堆積土によって生まれた地続きの土地をアキといい、面積が広くなるとアが膨らんでアハ(一拍音)になりアハキと発音されます。通常はカラスマという語が後ろに付きます。

 

◇「アヂ・マ
 堆積土によって生まれた地続きの土地をアキといい、面積が広くなるとアハキ、アヲキ、オホキなどという。他にキが、キ→チ→ヂと転じたアヂ、アハヂ、オウヂ、などの音で使われることがある。

また、アキ(空き地)の音は多くの場合、カラツマ(何も無い平地、カラスマ)と合わせた形で表わし、色々な音になる。

アキ・カラスマ/アキ・カラマ/アキ・カハラ/アハキ・カハラ/アキ・カバラ/アキ・ハラ/アハキ・ハラ/アヂ・フバラ/アキ・スマ/アキ・マ/アヂ・マ/アハキ・スマ/アハキ・マ、など。

 

○「味原」
アキ・カラツマがアキ・カラ→アヂ・ハラに転じて、この音に味原の字が充てられる。地名として残る味原は、その地がかつて堆積土によって出来た水辺の空き地であった事を意味します。

 

○「アハキ・マ」
 二神(那岐・那美)の国生みで《記》では始めに生まれた小さな土地を「水蛭子、入葦船而流去。淡島、亦不入子之例」〈水蛭子〔ヒルコ〕、葦船に入れて流し去る。淡島、また子の例〔タグイ〕に入れず〉とする。

淡島は、古い読み方だとアハ・カツマである。これがアワ・カシマと転じた音に充てたのか? しかし、これを児とは見做さず“流し去る”のはおかしい。

もし、アハキ・マ→アワヂ・マと転じた音に淡島の字を充てたのだとしら、キ・マ→ヂマと移った音に島の字を使ったことになる。これは明らかに間違っている。島(シマ)はツマが原音です。

《書紀》では「先以淡路洲胞、意所不快。故名之曰淡路洲」〈先ず淡路洲を以って胞〔エナ〕となすも、意〔ココロ〕快〔ヨ〕からず。故、名を淡路洲と曰す〉とする。

幾つかの「一書曰」で、蛭兒、また淡洲、淡路洲、といった《記》と同様の名が並ぶ。ここでもまた淡洲〔アワ・シマ〕や淡路洲〔アワヂ・シマ〕など、アハヂ・マ、またアワヂ・シマと転じた音に充てている。恐らく、執筆者も言葉の意味がよく分からないまま、書いてるのではないか。

 

◇大阪湾の西にある瀬戸内最大の島である淡路島は、アキツ・カツマ(立派な陸地)がアハヂツ・カシマと発音され、この音に淡路之島や淡道之島の字が充てられたものです。

※ここでの「之」の字は重要です。アキツの「ツ」を示す文字であり、アキ・スマには無い音です。

“ 不出来で恥かしい ” からアハヂ(吾恥)島と呼ぶという規模の島ではないし、まして胞などに見立てる島では有り得ない。流し去る淡嶋や淡路洲とは音の成り立ちも意味も、全く別モノである事は云うまでも有りません。