11「村」

地名国名[028]
11、カツラ

◇「村、邑」
 村〔ムラ〕という語の原音はカツラです。これがカムラになり、カが落ちてムラの音で定着します。よって、当初は村や邑の一文字でカツラだった。
 カツラ→カブラ→カムラ→ムラ。

 人家が多く集まっている在所をいいますが、それぞれの地域で独自の音になり、カツラもその音に合わせた漢字が充てられます。ただし、字義は関係ありません。
カツラ(桂)、カツンラ→カツウラ(勝浦)、クシラ(櫛羅、串良)、クシンラ→クシウラ(串卜)など、地名として残っています。

また、複数の世帯が、仕切られた敷地内に纏まって暮らしてる集落(一つの共同体)をカブと呼ぶ地域がありました。

言葉を略すというのはよく有ることです。カツラがカブラと転じてカブ、カムラの音からムラ、という風に地域差が生まれるのもまた自然なことです。

カツラの先二音を残すカツ(カブ)派、後の二音を残すツラ(ムラ)派、というのが全国にあったのでしょう。最終的にムラがシェアを広げ、社会標準になっていきました。

 

◇「カツラ・キ」
 初めにカツキという語があり、カツの後ろにラが入って、カツラキになったと思われます。
「キ」の音は色んなモノが対象です。人、動物、植物、建物、土地、など凡ゆるものです。その事が却って紛らわしさを生み、カツラだけで使われたのかも知れません。

*キの音が人を指す場合は、カツラ・キ→カムラ・ヂ(ムラ・ヂ)といい、村柱や村主また村治の字が、カブラギの音に鏑木の字が充てられます。神漏芸〔カムロギ〕も、カツラ・キ→カムロギと転じた音でしょう。これらは領主やムラオサを表わす語と思われます。

《神武記》の歌にある「久治良佐夜流」の久治良も、カツラ→クチラと転じたものだとすれば、鯨でも鷹でもなく、単純にカシラの意味でよいでしょう。

 

◇カツラには塊りの意があり、人体では、一番上部にあって目鼻口耳が付いている塊りをカシラ(頭)や、クビラ(首)といいます。また、コムラ(腓)やコブ(瘤)などの塊りもカツラが原音と思われます。

*植物では、樹木の名に使われるほか、切株〔キリカブ〕や根株〔ネカブ〕の語があります。根株とは、蕪〔カブラ〕や大根など根の大塊です。

大根を薄くむくのを桂剥き〔カツラ・ムキ〕といいますが、カブラの元の音がカツラであり、これを剥くからカツラムキです。「桂帯のようにむくから」というのはジョーク説です。
(※ダイコンは、オホ・カツラ→大塊→大根→ダイコン、と転化したか?)

*動物では、人間にとって脅威となるもの(猛獣)をいいます。コブラ(毒蛇)、コンドル(猛鳥)、カダル(大きいトガケ/インドネシア語)、大ワニ(アリゲーターはアルカダル、クロコダイルはカツカダル、)など。

またカがタに転音して、カツラ→カィザル→タィジェル(ti・ge・r)、と移ります。「タイガーの元音がカツラ…、こじつけ?」と、不審に思う人もいるでしょうが、声音転化として、何ら問題ありません。

 

◇外国にあるカツラは、カがカィと膨らみ、ツがサ行音になり、ラが同行音の他の音に移ります。

それによりカツラは、→カィサル、カェサル(Caesar)、カィセル(Keyser/オランダ)、更にカィザー(Kaiser/ドイツ)、になる。カィザーは君主や皇帝を意味するようです。

中東地域では、カがファになり、→ファイサル(Faisal 、Faysal)の音が多いです。使われ方も皇帝などの称号ではなく、男性の名前として使われます。日本的にいえば「桂さん」という感じでしょうか。

別の意味として「裁判官」とか「鋭利な剣」などの意味もあるらしい。カツキの意味の一つに「優越したモノ」というのも有るので、カツキの変異であるカツラに、同様の意味付けがあるのも頷けます。

 

▽ちなみに。
 英語のカントリー(country)は、カツラキが元の音で間違いないでしょう。カツラキ→カンツロイ→カゥントルイ、の音転が可能です。

*音や意味が似てるからといって、安直に飛びつくのは危険です。充分吟味する必要はあるでしょう。

ただ、「カツラ」この音が、日本語では村、英語では田舎。共に繋がるこの語が「偶然の類似」で済まされるでしょうか。カツラは、恐らく人類語です。