神名人名・8-5「推古」

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8、ツキツキ〈5/5〉

○「豊御食炊屋比賣命」(推古天皇
敏達天皇の妻。名は額田部皇女。豊御食炊屋比賣の一般的な読み方は、豊・御食・炊屋・比賣〔トヨ・ミケ・カシギヤ・ヒメ〕である。

しかし、妃の呼称と見れば別の解釈もある。先の二文字「豊御」はツキツキから転じたツユツミ(またはトヨツキ)と読む。

  ツキツキ・カツキ・ツ・ツメ ↓に変化。
  ツユツミ・カスキ・ユ・フメ
  トヨツミ・カシキ・ヤ・ヒメ
  豊 ツ御・食炊 ・屋・比賣

ツキツキ・ツメの間にカツキが入る。この音はどういう意味を持つのか。カシコ(賢)、クシキ(美)、或いはカチキ(勝気)な女か。カツキには色々な意味があるので判断が難しい。

生活道具や農機具などは大切な物なので、しばしば人の名に使われる。カツキから転じたカシキの音に同音の食炊(カシキ=竃)の字を充てる。この字を名に使うからといって推古天皇が炊事を担当していた訳ではない。

明治の頃まで女性の名の上位にカマドがあり、またナベ(鍋)、カメ(甕)といった類も珍しくなかった。これらと同様の発想であろう。

記紀共にこの女性を大王とする。大王はアキツミである。もし、この女性が大王ならば、ツキツキという語を外さなくて良いのだろうか?