「ツツ・キ」禊

【ツツ考】[010]___
3-2.液体の流れ 「キツ・スス・キ」

◇「
伊邪那岐が黄泉国から戻ってきた時、云う。
「故吾者 爲御身之禊」〈故に吾は、御身これ禊を為さむ〉

*また、大穴牟遅が稲羽の裸菟に云う。
「今急往此水門 以水洗汝身」〈今すぐ此〔ソコ〕の川口〔カワクチ〕に往き、汝の身、真水を以って洗〔ススギ〕なせ〉

「以水洗、汝身」を「汝身、以水洗」と文字を置き換えれば、「御身、之禊」と良く似た表記になる。

 御〔ア〕が身を、之〔コレ〕、禊〔ミヅ・ソソギ〕
 汝〔ナ〕の身を、以って、水洗〔ミヅ・ススギ〕

御身〔アがミ〕、汝身〔ナのミ〕、この違いだけである。水洗はミヅ・ススギ、禊はミツ・ソソギ。音は少し違いますが、基本的な意味は同じです。
※「御」の使い方については別稿で示す。

 

◇神社の拝殿に参拝する前には手水舎で身を清めるが、柄杓の水を落下させて手を濯ぐのは略式のミソギです。

食器洗いや衣類の洗濯も、ススギは綺麗な水を流し乍ら行なうものです。溜り水で行うのをミソギとは言わない。

◉ミソギとは「流れる清い真水」で行なう事を意味する言葉であり、必ず此れを前提とする。

 

▽ちなみに。
 身に付いた穢れを削ぎ落とすので、ミソギは「身削ぎ」である、という解釈が一部にあります。ミソギのミは水であって身では有りません。「削ぎ〈ソぎ〉」とは、道具を使って削ることをいい、水で洗う事とは行為自体が違います。
※「削ぎ」:表面に付いてる物や、表面自体を何らかの道具を使って薄くこそぎ取る(また、削り取る)こと。