21「曽根」「長髄」

地名国名[057]___
 曽根の地名は全国に存在しますが、多くの場合が水に面した土地、また、かつて水に面していた地域です。ソネには埇や埣などの字も使われ、石の多い土地とも云われます。

21、カツネ

◇「曽根
 きれいな砂浜ではない石や土の岸辺。カソネ。またコソネ、ヲソネ、ソネ、などとも発音し、小曽根、曽根、といった地名になる。

水辺の地(陸の端)はカツキというのが基本音なので、カソニ、またソニが元の音ではないか。ニの音は水分の意もあります。

宇比地邇・須比智邇〔ウヒヂニスヒヂニ〕が水底の土の神なら、湿地帯をいうとも思われます。何れにしろ、足を踏み入れにくい環境の水辺をいったようです。

キの音から転じた「ニ」の音ですが、しばしば「ネ」に変わる。ニィ(兄)とネィ(姉)、ヒコニ(比古尼)とヒコネ(比古根)などの音になる。

 

八千矛神がヤマトに行く身支度をする時の、歌の一節に「幣都那美 曽邇奴岐宇弖…」〈辺つ波、其に脱きうて…〉というのがある。

ここでの「曽邇〔ソニ〕」は「そこらに」の意だが、この語に対して枕詞「辺つ波」を置いているのは、波打ち際を表わすソニ(水辺の土)と同音であるところから、掛けているのではないか。

 

「ナガスネ」
 伊波禮毘古(神武)が難波にやって来て、或る場所から上陸しようとしたが、登美能那賀須泥毘古〔トミノ ナガスネビコ〕に撃退される。この人物は海岸線を警備する者か、或いはこの海辺地域を領地にする者か。

那賀須泥毘古とは個人の名ではなく、ヌカツニ・ツキ→ナガスネ・ビコと転じた音でしょう。後に中曽根、仲宗根、長曽根などの名になります。

《書紀》に「長髄、是邑之本號焉。因亦以為人名」〈長髄、是は邑の名が元である。因って、また人の名と為す〉としているが、ナガスネ邑では上代以前の村の呼称音として考えてづらい。

ナガスネは地形の名ではあるが、この時代にあっては村(邑)の名でもなく人名としての固有名詞でもないでしょう。

◇「小曽根〔ヲゾネ 〕」豊中市の地名。今では内陸だが、かつてはこの辺りまで海岸線が入り込んでいた。ここから南を望むと、海を隔てて曽根崎(難波崎の先端にある平地、西側)が見える。