13「飛鳥」「有馬」

地名国名[031]
13、アツ・カツラ

○「飛鳥」
 動きを表わす語をツツといいます。生きモノ全般をキの音で表わすので、「動く・モノ」はツツ・キ、またツツ・ツキと言います。

ここでは鳥の字を使うので「ツツ・ツキ =(空中を)移動する・モノ」というのがの原意です。このツツ・ツキの音に飛鳥の文字が充てられます。ツツ→トブと移り「飛」の字を、ツキ→トリと転じて「鳥」の字になる。

古文書の中では、鳥をフフトリやホホトリと呼んでます。また、都都鳥、筒鳥、千々鳥、ほほ鳥、ポンポン鳥、などは鳥の名としての表記です。全て元はツツ・ツキ、またツツ・キです。

*一方、王城の地もツツキといいます。地名として筒木や綴喜の字も使いますが、同じ音を持った飛鳥〔ツツキ〕の字を用いるのも、一時期の流行りとしてあったのでしょう。

 

○「明日香村」
 一般的なキツ・カツラのキツの位置にアツが乗りますが、アツが持つ意味は一つでは無い。だから幾つかの可能性を考慮しなければなりません。

 アツ・カツラ→アス・カムラ。
        明日  香 村(飛鳥村)

アツには、⑴ 大きい。⑵ 東方面。この二つが考えられます。ここでのアツはどちらを指すのか、或いは両方の意味を含まさせているのでしょうか。

近飛鳥や遠飛鳥という呼び方は難波から見てのものでしょう。そして、それは東(アヅ・マ)方面にあります。

しかし、飛鳥自体が長く王城の地でもあり「大きな集落」であったのも間違いない。難波に王宮が出来るより、アスカと呼ぶ歴史は古い。

つまり、アスカのアス(元はアツ)は大であり、この音は東を意味しない。
ただし、明日香の明日〔アス〕は朝(朝日)の事であり、この文字は東を意味しています。

アツ・カツラは主幹集落の意を持った言葉であったろうと考えます。そこは王が住む地、ツツキ(飛鳥)であり、同時にアス・カムラ(大・村)でした。そこから何時しか、表記は飛鳥、音はアス・カを使う様になった。

巨椋池の出口の辺りには、一口〔ヒトクチ〕と書いてイモアライ(疫病やらいの儀場)と読む地名があります。イボ祓い(イボ=疱瘡)ともいいました。
この様に、同じ場所に表記や呼び名が複数ある場合、文字はAを、音はBを採るという事があります。飛鳥ツツキの文字とアスカの音も、またその一例でしょう。

 

○「有馬村」
 アツ・カツラ→アル・ハブラ→アリ・マムラ
               有  馬 村

◇カの音は、マ(カ→ハ→バ→マ)になる事も多く、カツラがマツラやマムラになる。これにアツから転じたアリが乗り、アリ・マムラになる。兵庫県の有馬郷、和歌山県の有馬村、などが有名です。

《書紀》一書曰 ⑸ に、伊奘冉尊の埋葬地として「…故葬於紀伊国、熊野之有馬村焉」〈故に、紀伊国の熊野の有馬村に葬る〉とある。ここでのアリは東を意味すると思われるが定かではない。

《崇峻記》に、有真香邑の地名があるが、不思議な書き様である。有馬村の表記を「有馬・カムラ」と読み、このカムラの音に香村の字を充てたものか。或いは有馬をアマとでも読むのか。この名の経緯〔イキサツ〕は今のところ不詳。

 

▽ちなみに。海外のアツ・カツラ。
 アツ・カブラ  ⚪︎カツラのツが、→ブに。
 アヅ・カンブラ   ⚪︎カが、→カン →ハンに。
 アル・ハンブラ ⚪︎アツがアルに。

「ツ」の音には二種類の転化ルートがあります。
1、ツ→ヅ→ヌ→ル。 2、ツ→フ→ブ→ム。
よって、アツがアル、カツラがカブラ、またカムラになる。

カブラのカが撥ねてカン、さらにハンと転じてハンブラになった場合、アツ・カツラ→アル・ハンブラになる。これは、アルハムブラ宮殿(城塞とも)と音が同じ。偶然かも知れせん。

この名の由来は諸説あり、強い定説も無く、『よく分からない』というのが実際のところです。もし、アルハンブラの元の音がアツ・カツラだとしたら、日本語では大集落、また大村〔オオムラ〕、或いは有馬村〔アリマムラ〕になりますが。

人の呼称から来たとすれば、アツ・カツラキと、後ろにキ(人)が付き、意味は大領主といったところでしょう。カツラギを日本の苗字にすると、鏑木さん、村主さん。アツ・カツラギは大村治さん、となりますね。

 

▽ちなみに・その2
トレモノ奏法が美しい名曲「アルハンブラの思い出」を奏でる女性ギタリストの名が、村治(佳織)さんというのが面白い。