4-1「秋津島」

地名国名[013]
4、アキツ・カツマ〈1/4〉

◇「アキツ・カツマ」について
 良い土地をキツ・カツマといい、さらに立派な土地は頭に「大」の意味を持つ「ア」が乗ってアキツ・カツマといいます。

地域や時代によって音や表記は様々に変化して使われますが、広い土地、優れた土地、大きな土地、などを表わす名です。また同時に天空を表わす呼称でもあります。

○「秋津島
 アキツ・カツマ→アキツ・カシマ
         秋 津 島

 アキツの音に秋津、カシマに島の字が素直に充てられて、秋津島の表記が為されました。

《神武紀》に「…廻望國狀曰、…猶如蜻蛉之臀呫焉。由是、始有秋津洲之號也」〈…国の状〔さま〕を廻り望みて曰く、…蜻蛉〔アキヅ〕の臀呫〔トナメ〕のようだ。是を由とし、秋津洲の名の始め有り〉

アキヅ(トンボ)の重連、これが秋津洲の名の由来とするのですが、もちろん後付けの作り話です。

トナメとはツツキ・ナナミ(連なり・並び)という語であり、横方向に二匹がつながった状態を表わす語です。トンボの連結も山脈もツツナミの音で表わされます。

奈良盆地の北部に盾列塚古墳群があります。このタタナミ(タテナラビ)の音も同様で、或る場所に幾つもの墓が並んでいるのを表わすツツキ・ナナミの省略形ツツナミが元の音でしょう。

通名詞としてのアキツカシマは「素晴らしい土地」を意味しますが、この《神武紀》に云う秋津洲とは、連なる峰々に囲まれた或る地域(恐らく奈良盆地)を指しています。

《景行紀》に、筑紫国の「三毛」。また「御木国」という表記がありますが、これらもアキツ・カツマを表すものと思われます。

 

▽ちなみに
 会津〔アイヅ〕はアキツ、焼津〔ヤイヅ〕は ィアキツ、という音がはじまりの地名でしょうが、此の地がカツマ(国)だったのか、カツラ(村)だったのかがはっきりしないので、ここでは扱いません。

 

[014]へ、つづく。