神名人名・8-1「支援者」

[012]
8、ツキツキ 〈1/5〉


① 接頭辞「ア」と「ツ」について
 天はアキ(アメ)、地はツキ(ツチ)。日はアキ(オヒさま)、月はツキ(ツキさま)。水からア・カル(上がる)、水にツ・カル(浸かる)などもアとツによって出来ている言葉である。

また、ツの音はしばしばサ行音に移り、上下移動をいうア・カル(上がる)、サ・カル(下がる)。寒暖はアツキの音が、アツイ(暑い)、ス・アツイ→ス・アブイ→スァムイ(寒い)の音になる。方角では、東の地をアツ・マ(東)、西の地をス・アツマ→スァツマ→サツマ(薩摩)という。

*語の頭に置かれるアとツは、次のような対比の役割をもつ。
「ア」→陽・天・日・大・王・主・上・東・暑。
「ツ」→陰・地・月・小・佐・従・下・西・寒。


②「ツキツキ」について
 ア・キツキ(大のヒト)は集団の統率者(リーダー)ではあるが、一人で全てを為すことは出来ない。そこには協力者(配下の者)が必要である。

ツ・キツキ(小のヒト)とは、太古・上代・古代の日本に於いて、アキツキの傍らに居て、補佐、支援、協力、守護、といった働きをしてくれる立場の人達に対し使われる呼称である。

ツキツキの後ろのキがミにも変わるが、その転化音及び表記には、月読、月弓、月夜見、槻弓、豊玉。また、小子〔チイサコ〕、少名子〔スクナコ〕などがある。

※ツキツミ→ツキユミ、ツクヨミ、などは「ツ」の音がユやヨ(ヤ行音)に移る。ツキツミ→トヨタマ(豊玉)は、「キ」の音がヨ(ヤ行音)に移る。

転音ルートは、ツ→チウ→イウ(ユ)。キ→キウ→イウ(ユ)。ヤ行音は、ツからもキからも移ってくる音である。

 

ツキツキであれツキツミであれ、この語自体に性別はない。男女の別はこの語に続けてキ(男/ビコ)や、メ(女/ビメ)を付けることで表わす。

ツキツキ・ツキという語は現代の日本語の中でも、付き添い(ツキスイ・ビト)、付き人(ツキツキ・ビト)、助っ人(スケツキ・ビト)など、音を遡ればツキツキに行き着く言葉が日常的に使われている。これらもまた基本的な意味は、助ける人、補佐する人、手伝い人、ということである。

《神武記》の歌にある「・・・ 伊麻須氣爾許泥」〈・・・ 今スケ来ね〉などのスケ(助)という語は、ツキツキが転化省略したものであり、救援を意味する一単語となって、太古から現代まで生き続けている言葉なのである。

 

[013]に、つづく。